5.私を呼ぶ声
発作的に家を飛び出して、自暴自棄になりつつ本当にグレてやろうと、普段は近寄りもしない夜のネオン街を彷徨った。
時刻はアフター5(言い方がいちいち古い)をとうに過ぎ、周りは酒に浸かって体臭まで酒臭くなったようなオジサンだらけだった。
みんなほんのり出来上がって、次の店を捜し歩いていた。
そんな中を私はふらふらと歩いていた。
場に似つかわしくない、異質な女子高生はそれは目立つようで、何人もの酔っ払いが愛想してきた。
その辺りまでの記憶はかろうじてあるのに、その後は曖昧どころか全く覚えていない。
確か、夕食も食べずに飛び出したので腹の虫が豪快に鳴いたのだと思う。
寄り付いてきた怪しげなオジサンたちをうざったい気持ちで振り切っていたけれど、ご飯でも奢ってもらおうかと考えたに違いない。(記憶はないけど私ならたぶんそうする。)
気付いたら朝で、貞操の危機的状況。いつの間にオジサンがオニイサンになったんだろう。
貞操は守られたけど、これからどうなるか分からない。
うむむ・・・。さっきの男の人は若そうだったけど、知らない人とちょっと、そういうことは・・・・ねえ・・・。
好みのタイプならラッキー。とかそういう変にポジティブ思考もないし。
困った。
どうやってここから家に帰ろうか・・・。
視線を窓の外、地上に降ろす。
私の知るような街並みなんて高が知れている。けれど一縷の望みを抱いて見知った景色を探したけれども、案の定それはない。
我知らず溜息が唇から漏れ出た。
「ふみ?」
驚いて振り返ると、さっきのお兄さんが扉の前に立っていた。
あ・・・・・・・・・・。
好みかもしれない・・・・・・・・。
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