34.不束者


こうして葎屋さんに会いに来てみたはいいけれど向こうからすれば、見合いを脱走して、「大嫌いだ」なんて暴言吐いて、挙句の果てには違う男に乗り換えて、非常識極まりない女が何しに来たのよって感じよね・・・。
あああ、なんかどうしよう。目も合わせられない・・・。
逃げ出したい・・・。

「佐想さん?」

ずんずん落ち込んでいく私の頭に葎屋さんの訝る声がかかった。
「うあ、はい!あの、この間は本当に申し訳ありませんでした。誤って済むような問題でもないんですけど、私ったら動揺しすぎて葎屋さんに失礼なことばかりして、葎屋さんからすれば何の用だよってかんじですよね!!!」
もう、穴があったら入りたい。掘り返してでも入りたい・・・。
このあがり性はどうにかしたいものだけど、どうにもできない。自分で言ってる言葉が次の瞬間覚えてないんだから厄介だわ。

葎屋さんの反応がなかなか返ってこないので、固く閉じていたまぶたをそっと開けると、きょとんとした顔があった。
私と目が合うと、表情を緩めた。お・・怒ってない?
「うん、そこまで言うつもりはなかったんだけど、その通りですね。で、何しにきたの?」
怒ってる!そりゃあ、ごもっともなんですけど、爽やか笑顔できついこと言わないで!なんか負のオーラが漂ってるんです!
言うつもりなかったっても思ってはいたんですよね。
とほほ。身から出た錆、自業自得か。


「むぐーー!女泣かせんなよーー!」
「違うっつーの、ふざけんなーー!!」


ネガティブにこうべを垂れる私と相対する葎屋さんに、彼の顔見知りが野次を飛ばしていった。
校門前でこんなことしてたら、そりゃあ人目を惹くのでしょうね。
あああ、なんだって私ったら校門前で待ち伏せなんて浅慮なことをしでかしたのかしら・・・。
穴を掘りたい・・・。
この身が小さくなって見えなくなってしまえばいいのに。スモールライトか如意光が欲しい、今すぐ欲しい。

「あの・・・佐想さん?」

「はい。」

「ここじゃ、話もできないし場所移ろうか。」

その申し出をお待ち申し上げておりました。
不束者で申し訳ございません。







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