26.同属嫌悪
「この馬鹿タレがーーーーーーー!!!!!!!」
バチコーーーーーーーン!!!
「いたいっっ!」
本日二度目。ちょっと、髪型が崩れるでしょう!振袖で髪型崩れたら目も当てられない。
父は私の姿を認めるなり逃げる間もなく走り寄ってきて豪快に頭を叩いた。
豪快に娘の頭を叩いた社長と豪快に父に頭を叩かれた令嬢に唖然とする相手方の空気が痛々しい。
お父さん、もっと周りの空気を読もうよ。恥ずかしいじゃないの。
しかし睨みあげた父の形相はそれ以上に恐ろしく、本当に怒っていて、自然と防衛本能の芽生えた私は尊さんの後ろに隠れた。
「ひふみ!何べん尊くんに迷惑かけたら気ぃ済むんや!さっさと見合いに戻るで!!」
にじり寄った父に恐れおののいて、尊さんを全面に押し出した。目を合わせたら石になる!
「い・・いやや!!私は戻らん!」
形振りかまってられるか!
「何言うてるんや。恥ずかしいんか?せやけどもうほぼ決まりの話なんや。祖父さんまで話はいってる。」
うっそ!そこまで話が進んでたとは!!・・・・許せん!私の気持ちも聞かないで〜〜!!
「ぜっっったいに嫌ーーー!!!私は・・私は・・・
尊さんと結婚するんやからーーーー!!!!!!!!!」
水を打ったよう。とは正にこういうことを言うのか。
こういう状況を「しーん」と表現しだしたのは、かの偉大な漫画家・手塚治虫なのだそうな。(マメ知識)
「ど・・・・どあほーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
「なんでアホなんや!!」
「尊くんにはそこに別嬪の恋人がいとるやろがーーーーー!!!美人秘書の!!!」
再び場が鎮まる。
さっきよりも底冷えするような空気だった。
まあ、誤解されがちだと言えばそれまでよね。でも違うと言ってもそうそう信じられる話ではない。
どこからどう見ても、紅子さんと尊さんの関係は公私共に親密だもの。
「「不本意・・・。」」
ぽつりと部屋に響く怒りに満ちた言葉さえもシンクロするほど、この二人は親密だと誰もが錯覚する。
でもたぶんそうじゃない。
なんとなく勘付いてきたんだけど・・・。
「誰がこんな男と!!!」
「誰がこんな女と!!!」
同類なんだろうな・・・この二人・・・。
好みがよく被るって言ってたし・・・。
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