24.きょうだい


「・・・・・・・萎えた・・・・・・。」
脱力した彼の体はどっしりと私にもたれかかって、彼の体重を支えきれない私は倒れる寸前だった。
「倒れるーー!!」
前に、彼は私の体を抱えなおして体勢を立て直した。びびった・・・。

「あら〜、もう浮気したのかと思ったらひふみちゃんだったのね〜。綺麗に着飾って、隣の男はよれよれの格好だし、なんだか見合いを脱走してきたって感じね〜。」
「その通りですが、尊さんが攫ってきたのではありません。」
私が自ら逃げて参りました。ロマンスが好きなら攫ってきて欲しいんだろうけど、この人にそんな甲斐性ありませんでした。ご期待に応えられず申し訳ない。
「やっぱりね、アンタにそんな甲斐性あるわけないか。」
オーバーアクション好きのアメリカ人のごとく、肩をすくめて呆れ顔。
紅子さんは尊さんを理解しすぎてる・・・。何にもないって分かってるけど、ちょっと嫉妬してしまうのは否定できない。
でも尊さんが嬉しがるから絶対に言わないんだ。

「マルベニ、晩飯ならまだ早いだろ。何しにきたんだ。」
ぶすっと不貞腐れて尊さんが口を挟んだ。そうよね、おやつをせびりに来たならまだしも、晩御飯にはまだ早いわよね。というか、紅子さんオートロックはフリーパス?なんで?
「あはは、ひふみちゃんビックリした〜?ウチ、同じマンションなのよ。」
なるほど。
「僕の話は素無視ですか。」
「尊さん、その前にいい加減離して下さい。」
ひとまえで〜〜〜!!
彼の腕の中でもがいた。てっきり「嫌だ」とか言って往生際悪く更に抱きしめられるかと思いきや、すんなりと手を離してくれた。予想だにしてなかった彼の行動に、一瞬面食らって振り返ると、唇を尖らせて子どもみたいに不貞腐れていた。
「キミの嫌がることはしない。」
嫌われるのは嫌だからね。
さっきの紅子さんと同じく肩をすくめて苦笑ってみせた。

「ゴチソウサマデシタ。」
二人で振り返ると、合掌した紅子さんが私達を生暖かい目で見ていた。
「スキャンダルの匂いがすると思って来てみたの。大手商社の跡取り息子が大グループ総帥の愛孫に横恋慕!見合いの席に乗り込んで強奪!!愛の逃避行!!って、うちの弟が触れ込んできたわ。」
「え、紅子さんご兄弟がいらっしゃるんですか!」
すごーい、みたーい。紅子さん似の美人兄弟だったらどうしよう、鼻血噴くかも。
でも反則よね、紅子さんの顔で男だったら・・・美人過ぎて逆に嫉妬しちゃうわ。
「うん、ホモの弟が。」
「狙われた・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

前言撤回。
絶対に会いたくないわ。
出てこなくていいわ。
多分絶対仲良くできない。
血で血を洗う争いに発展するに違いない。



「あ、紅子さん。ホモの弟さんの話は置いといて、晩御飯食べましょうか。」







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