仮初のつがい鳥 |
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学校から帰ってくると、リビングのローテーブルの上に見合い写真が山ほど積まれていて、 「さあ、どれが良い?どの方も将来有望な方ばかりよ」 と母親が笑顔で言う。 稔は学校指定の鞄を肩から下ろしながら、母親の隣に腰掛けた。 「どれが良いと言われましても、私はまだ中学生ですが、お母様?」 そう言いながらも積まれた写真の一つを開いて目を通す。 「何を言ってるの、もうすぐ卒業するでしょう。貴方、お誕生日は夏ですからね、16歳になったら結婚するのに今からお相手選びじゃ遅いくらいよ」 「はあ、そうですか」 稔はさほど驚かない。自分が16歳になったら、どこかの誰かと結婚することは、幼い頃から決められていたことだった。 上の姉も下の姉も、同じように16歳で結婚させられ家を出ている。 いずれも相手は資産家や企業経営者で、稔の家が経営する会社の取引先であったり投資家であったりした。 「ママね、この方なんか良いと思うの」 そう言って母親が取り出してきた写真と釣り書に目を通した。 どこかの政治家の息子らしく、自身は外交官であるとか。稔とは20も歳が離れていることに彼女は眉根を寄せた。 あまり政治家との癒着は好ましくない。稔としては願い下げたい所だ。 しかし結局の所、政略結婚であることは明らかであるので、期待は出来ないだろう。 今すぐに返事をしろとはさすがに言われはしないだろうが、母親の様子だと決断は急かされそうだ。 早速、他の見合い写真を見せようとする母親に、稔は着替えてくると言い訳して席を立った。 |
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