かすがい☆大作戦
おまけ
ぼくの朝は午前七時に始まる。目覚まし時計の音に起床を果たし、歯みがき洗顔を終えたのち、朝食をいただく。 「かずさ、おはよう」 「お父さんおはよう」 食卓につくと、父が寝間着のままで新聞を読んでいた。 「尊さん、着替えてくるくらいしたら?」 「もう一回寝るからこのままでいい」 「……食べてすぐは寝ないでね、体に悪いから」 繁忙の日々に追われていた父は、昨日めでたく仕事をひと段落させたので、有能秘書様からありがたく休暇をちょうだいした次第なのだ。 疲労困憊の父を見てきた母なので、だらけた姿もとがめはしなかった。二度寝も止めはしなかった。 「お父さんはお休みだけど、ぼくは幼稚園に行くね」 ぼくは制服に着替えると、手を振る父にいってきますと言い、母と手をつないで幼稚園バスを待った。 「ねえ、お母さん」 ぼくは唐突に母に呼びかける。母は短く返事をしてぼくを見下ろした。 「ぼく今度は妹が欲しいなあ」 母のおどろいた顔を確認すると、ぼくはにっこり笑って、やってきた幼稚園バスに乗り込んだのだった。 「いいなあ、かずくんちは」 ぼくは幼稚園で仲良しのいつみちゃんと、砂場でトンネルを掘っていた。 「いつみちゃんも、お願いしてみたら?」 お願いしてみなくては、何も始まらない。 「パパとママが仲良くしてなくちゃいけないんでしょう?うちのパパとママはすっごく仲良いけど、一度お願いしてみたら、うーんって難しい顔されちゃったよ?」 ぼくはいつみちゃんの両親を思い浮かべた。二人とも生真面目な感じだから、安請け合いはしないのかもしれない。期待を裏切った時、いつみちゃんがかわいそうだからだろうか。 「もう一回お願いしてみる!わたしも妹ほしいもん」 かくしてぼくといつみちゃんのおねだりが効いたのか、それぞれに妹が出来たのは、これよりまだ先の話。 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ ((おまけのおまけ)) ぼく・・・・・・水流一賛(つるかずさ) 水流家長男。無敵の五歳児。お父さん大好き、お父さん子。あえて描写はしなかったが、じつはメガネをかけている。 お父さん・・・・・・水流尊 つるみや商事の社長さん。老眼はまだだぞ、な33歳。妻と子どもを溺愛する完璧な父親。飴担当、しかし怒ると恐ろしいらしい。 お母さん・・・・・・水流ひふみ 専業主婦24歳。夫と子どもを溺愛する若妻。鞭担当。 弟・・・・・・水流周(つるあまね) 天衣無縫な三歳児。お母さん子。 いつみちゃん・・・・・・江副乙未(えぞえいつみ) かずさの幼稚園のお友達。お母さん同士はお友達らしい。 |