あとがき


ここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。
中編のくせに長々と連載してしまって申し訳なく思います。
それでも諦めずに完走できたのはやっぱりいつでも読んでくれている皆さんの拍手や感想なんですね。
改めて感謝感激でございます。

さて、物足りないラストだと思う方もいらっしゃるかとは存じますが、「nostalgic speaker」これにて終了とさせていただきます。
私が未消化!と思う部分は下に小ネタで載せておきました。
笑ってください。忘れてましたのよ、見家山雄さん。

それではごきげんよう。

2007.3.14(ホワイトデー!)
縁紅弁慶




おまけ@

「あれ、ヤマト。これからみんなと昼メシ食いにいくけど、行かねーの?」
「え、あ、うん。・・・これからちょっと用事・・・。」
見家からランチのお誘いを受けたがウチはこれからの予定を口ごもる。あんまり見家には言いたない。
「やまとさーん。迎えに来た。」
そこへ天の助けか、可愛い可愛い尊登場。向こうの方から元気よく手を振る様は、ウチを始め通りすがる女子を根こそぎノックアウト!
「おお!?尊、一人で来たんか、危ないやろ。」
可愛い尊はウチにタックルをかましてにっこりと笑った。
ついつい出てしまった方言に、後ろの見家がぎょっとして一歩引きよった。
ふっ・・・。
「大丈夫、トモ兄と一緒だから。」
「え、ともみん来てんの。」
「俺がいてたらなんかアカンのか。」
知らず頬の筋肉が緩くなった。付き合うことになっても、顔を合わせただけで赤面してしまう。
あの時答えた返事は、プロポーズめいた匂いがあったと気付いたウチは、弁解することもできんと今に至る。
ともみんがどう捉えてるかは知らんけど、なるようにしかならんやろ。
「佐想・・・友三さん?」
おっと、自ら口を開くまで存在感ナシやで見家。ウチらは三人そろって見家に振り向いた。
「っていうか、尊なんでこんなとこにいてんだよ。ヤマトも、佐想さんとどーゆー・・・」
「これから僕らは佐想さんのお家に行くの。トモミさんとやまとさんを迎えに来たの。」
実の叔父にやというのにえらくそっけない態度の尊。こんなに小さい子からそんなに強い感情を向けられるって、なにをやらかしたらそんだけ嫌いになられるんやろな。
「アンタは確か・・・見家の〜〜・・・」
「見家山雄です。姉が尊の母親で、尊がお世話になってます。」
見家はともみんを探るような眼差しで会釈した。叔父として当然の挨拶やけど、不躾やよ見家。
「ウチとは高校の頃からの同級生。」
ともみんからチラリと向けられた視線にウチとの関係を明かした。途端にともみんは口の端を僅かに持ち上げて、企み顔を作った。
「ああ、そう。いつも大和がお世話になってます、ボクのこと大和から聞いてないかな?」
あ、聞いてるわけないか。って付け加えて、それかなりのボケが聞かん限り物凄い嫌味やねんけど。
さすがにボケではなかったようで、見家はあからさまにムッと眉間に力を入れた。
それに満足したともみんはにやりと笑ってウチの手を取った。
「コレ、俺の嫁になるからちょっかい出さんとったってや。」
「よっっっ・・・!!」
あー、やっぱともみんはそのように捉えてたんか。まあ、そやろね。うん。
この分やと佐想のお家でもそのように思われてるんやろうなあ。
まあ、いいんやけど。
「ヤマト・・・・・・。」
「ゴメン、見家。あんたの気持ち知ってたけど、ウチあんたのこと、全っっ然!好みじゃないから。」
天使のような微笑で言うたった。
傍の尊はウチよりも天使のような微笑で、この上もなく嬉しそうに見家を見てた。




おまけA

「やまとさーん、久し振りー。」
久し振りって、先週来えへんかっただけやんか。
せやけど今回はホンマに久し振りな気がする。きっと尊に会いたくて会いたくてたまらんかったからやろう。
「はい、久し振り。」
ともみんにも、うちの両親にも向こうの両親にもすでに報告済みで、あとは尊だけやのに。毎日のように通う尊はこういう時に限ってなかなか顔を出さん。
「喜べ尊、いいニュースがある。」
「なにー?」
うちの家ではウチの子の様に伸び伸びとくつろぐ。すぐに裸足になって、畳の部屋にゴロゴロ寝転がる。
「赤ちゃんできてん。」
その言葉を聞いて尊は一瞬止まったあと、キョロキョロと周りを見回す。
「どこに?」
「まだお腹ん中やん。」
起き上がってきょとんとウチを見上げる尊に苦笑して、尊の前にしゃがみ込み腹部を示した。
周りに赤ん坊なんかいた例がないからやろか、赤ちゃんがどこから来るんか知らんのかもしれん。
「ここに赤ちゃん入ってんの?」
「そう。」
「・・・・・・す、すごい!すごい!すごい!すごい!やまとさんすごい!!」
キラキラと目を輝かせて尊敬の眼差しを向けられた。そうやろそうやろ、女にしか成し得ん偉業やで。
「男の子?女の子?どっち!?」
「それはまだ分からんねん〜。尊はどっちがいい?」
まだ指先くらいしかないしな、性別なんかより今は無事に育って欲しいわ。
尊は「う〜〜〜〜〜ん」と唸って、閃いたように顔を上げた。
「女の子がいい!」
「なんで?」
てっきり男の子がいいと言うもんやとばかり。弟欲しそうやし。
「僕がお嫁にもらうから!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
えーっと。
「尊、あんた今いくつやっけ?」
「8歳、小学校3年。今度の8月に9歳。」
ご丁寧に指で8及び9と示して見せてくれた。
「・・・・・・・年の差・・・。」
生まれた時からの許婚。うっわ、オイシイ。
「・・・うん、赤ちゃん女の子で、大きくなってもそない思うんやったら許したるよ。」
いやもう、絶対にそう仕向ける。
ゴメン、ともみん。赤ちゃん生まれる前から嫁入り先が決まってもた!



+++ +++ +++